ゲーム終盤、僅か1点リードという薄氷を踏むような状況でマウンドに上がる瞬間、普通の投手であれば心拍数は跳ね上がり、足がすくむようなプレッシャーに襲われる。しかし、彼がロジンバッグを手に取り、マウンドの土を足で踏み固める動作には、静寂と確信しか漂っていない。
「マウンドに上がれば、自分のボールを信じて投げるだけだ」――彼は常々そう語る。その表情には焦りや不安の色が一切見られない。走者を塁に出したとしても、視線は力強くバッターを見据え、淡々とストライクゾーンを攻め立てる。その冷静沈着な立ち振る舞いは、守る野手陣にも絶大な安心感を与えるのだ。
緊迫した場面になればなるほど、スタジアム全体の空気が彼を中心に回転し始める。観客の歓声すらも背中に背負い、一球一球に魂を込めて投げ込む姿は、まさに現代の「侍」と呼ぶにふさわしい凄みを放っている。