しかし、鮮烈な華々しいデビューの後に待っていたのは、平坦な道ではなかった。カンヌでの高評価とは裏腹に、芸能界という巨大な波の中で、自分自身の演技や将来に思い悩む下積み時代が続く。オーディションに落ち続け、葛藤を抱える日々。だが、彼女の内に秘められた表現への情熱が潰えることはなかった。
転機となったのは2008年公開の映画『クライマーズ・ハイ』である。日航機墜落事故を追う新聞社を舞台にした緊迫のヒューマンドラマにおいて、尾野真千子は男性社会の報道現場で奮闘する女性新聞記者・玉置千鶴役を熱演。激しい怒りや葛藤を剥き出しにする迫真の演技は、観客や映画関係者を息をのませ、彼女が単なる「奇跡の原石」から「一流の表現者」へと脱皮したことを証明した。