本作の重厚な空気感を決定づけているのが、主演を務める役所広司の圧倒的な存在感だ。彼が演じるのは、原生林の奥底で孤高の研究を続ける老植物学者。役所は役に没入するため、撮影開始の数ヶ月前から人里を離れ、電気も電波も届かない山小屋で孤独な生活を送ったという。
「カメラが回っていない瞬間でも、役所さんは木々や苔と対話しているようだった」と現場スタッフは振り返る。セリフを極限まで削ぎ落とし、眼光と佇まいだけで感情の渦を表現する圧巻の芝居。一切の妥協を排した肉体表現が、観客を物語の泥沼へと引きずり込んでいく。