さらに表現者としての深度を見せつけたのが、河瀨直美監督が手掛けた映画『朝が来る』だ。特別養子縁組によって男の子を迎え入れた母親・栗原佐都子役を演じた彼女は、役作りの域を超え、その人物の人生そのものを生きるかのような圧巻の演技を披露した。
不妊治療の苦悩、子を育てる歓喜、そして突然現れた謎の生母からの脅迫——複雑に絡み合う人間の業を描いたこの濃密なヒューマンドラマにおいて、彼女の存在感は際立っていた。言葉に頼らず、眼差し一つで痛切な葛藤を表現するその姿は、カンヌ国際映画祭をはじめ世界的な評価を獲得。日本映画が誇る至高のドラマティック・アクトとして深く記憶された。