「妥協を一切排除した脚本開発に、異例の歳月を費やした」。現場を指揮する映画プロデューサーはそう振り返る。タッグを組んだのは、現代社会の歪みを鋭敏に捉えることで定評のある気鋭の脚本家だ。数十稿に及ぶリライトの末に完成した決定稿は、登場人物一人ひとりの動機と感情の機微が極限まで研ぎ澄まされている。
台詞の端々に散りばめられたダブルミーニング、張り巡らされた視覚的モチーフの数々。作り手たちの狂気にも似たこだわりが、作品全体の強度を底上げしていることは疑いようがない。単なるエンタメ消費で終わらせないという強烈な作家性が、画面の隅々にまで満ち満ちている。