諏訪大社の御柱祭において、記録に残る重大事故は決して少なくありません。山から曳き出された巨木が市街地や山坂を越えて境内へと運ばれる全工程において、常に巨大な質量と傾斜、そして人垣が交錯するためです。
記憶に新しいところでは、2016年(平成28年)の建て御柱における転落死亡事故が挙げられます。上社本宮境内にて御柱を垂直に立て起こす作業中、柱の頂部付近に乗っていた氏子の男性が約10メートルの高さから地面に転落し、頭部を強く打って死亡しました。
さらに遡ると、2010年(平成22年)の下社春宮の境内でも、建て御柱の最中にワイヤーを巻き上げる車台が浮き上がって横転し、柱の上にいた氏子2名が転落して命を落とすという惨事が発生しています。同年の下社木落しでも氏子が柱の下敷きになり死亡するなど、一度の祭礼期間中に複数の尊い命が失われる事態となりました。
過去には1986年(昭和61年)や1992年(平成4年)にも、ワイヤー破断や柱の転落、巻き込まれなどによる死亡事故が発生しています。10トン前後の重量物が制御不能になった瞬間、人間の力では到底防ぎきれない物理的衝撃が発生することが、歴代の被害規模の大きさから浮き彫りになっています。