この戦いを決定的にドラマチックにしているのが、蟲柱・胡蝶しのぶとの凄絶な因縁だ。姉である胡蝶カナエを惨殺された過去を持つしのぶにとって、目の前の敵は絶対の仇。だが、体格に恵まれず鬼の首を斬ることができない彼女が選んだ作戦は、あまりにも過酷で悲痛なものだった。
自らの身体に数年単位で藤の花の毒を摂取させ続け、全身を「致死量の毒薬」へと変貌させる戦略。自らが喰われることを前提としたその執念は、感情を持たない敵に対する最大かつ唯一の対抗策となる。激しい怨念を内に秘めた美しい剣士と、どこまでも楽しげに彼女をあしらう冷血な教祖。ふたつの異質な意志が交差する瞬間、物語は息をのむ怒涛の展開へと加速する。