五木ひろし『山河』が魂を揺さぶる理由|小椋佳と挑んだ名曲の真実

五木ひろし『山河』が魂を揺さぶる理由|小椋佳と挑んだ名曲の真実

五木ひろし『山河』が魂を揺さぶる理由|小椋佳と挑んだ名曲の真実を詳しくリサーチ! 読者が気になる 情報と解説を凝縮して配信します。

2000年、ミレニアムの幕開けとともにリリースされた『山河』は、五木ひろしにとっても自らの歌手人生を賭けた一大プロジェクトでした。当時の歌謡界はJ-POPのCDバブル全盛期であり、従来型の演歌や歌謡曲はマーケットの片隅へと追いやられつつあった時代です。その閉塞感を打破すべく、五木ひろしが自ら構想したのが、アルバム『旅路』を中心とするコンセプトワークでした。

企画の根幹を担ったのは、叙情詩の巨匠・小椋佳による全曲作詞と、アリスのメンバーとしても知られる堀内孝雄による作曲という異色のコラボレーションです。当時の制作ドキュメンタリーや関係者の証言によると、五木ひろしは堀内孝雄に対して「フォークやポップスの洗練された哀愁を持ちながら、男の人生を丸ごと包み込むような、底知れぬスケールのメロディを書いてほしい」と熱望したと伝えられています。

堀内孝雄が紡ぎ出したメロディは、一般的な演歌の定型である「七五調のマイナー演歌節」とは一線を画すものでした。雄大なイントロから始まり、静かな語り口からサビに向かって怒濤のうねりを見せるコード展開は、さながら映画音楽やクラシックの交響詩を彷彿とさせます。そこへ小椋佳の哲学的かつ無常観に満ちた言葉が乗ることで、唯一無二の楽曲が完成しました。五木ひろし自身の回想録でも「デモテープを初めて聴いた瞬間、全身に鳥肌が立ち、自らのこれまでの道のりが走馬灯のように駆け巡った」と語られており、歌い手・作り手の魂が共鳴して誕生した奇跡の一曲であることが窺えます。

中村 さくら
Author

中村 さくら

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。