静止状態から時速数十キロの推進力を生み出す秘訣はどこにあるのか。スポーツ科学のバイオメカニクス解析によって、その驚くべき運動連鎖が明らかになっている。
第一の要素は「トリプル・エクステンション(股関節・膝関節・足首の同時伸展)」の爆発スピードだ。地面を蹴る接地時間はわずか0.2秒前後。その極小の時間内に、体重の数倍に達する床反力を水平斜め45度方向へ集中させる必要がある。
さらに見逃せないのが上半身の反動と腕の振り下ろしだ。腕を振り上げる遠心力で身体を前上方へ引っ張り上げ、空中で膝を胸元へ抱え込む「タッキング動作」によって滞空時間をミリ秒単位で伸ばす。筋力単体の強さではなく、全身の筋肉が寸分の狂いもなく同調するコーディネーション能力こそが、異次元の飛距離を生む絶対条件なのだ。