昭和から平成へと元号が移り変わる激動の空気のなかで、松坂慶子が示したスタンスは、女性のエンパワーメントという視点からも先駆的だった。
「見られる客体」から「自らを見せる主体」への転換。当時の保守的なメディア空間において、大女優が自らの肉体の美しさを肯定し、それを芸術へと昇華させた行為は、既成概念に対する鮮烈な異議申し立てでもあった。
痩身至上主義とは対極にある、豊かで生命力に満ちあふれた肉体美。それは健康的でありながらどこまでも甘美で、見る者に圧倒的な生命の賛歌を想起させた。現在、世界中でボディポジティブや表現の主体性が再定義される文脈においても、彼女の遺した足跡はまったく色褪せていない。