矢野の活動範囲はビジュアル領域を超えて広がっている。歌手・中村佳穂のアルバムジャケット、劇団ロロのフライヤー。音楽と演劇という時間芸術との協働は、矢野に新たな表現の次元をもたらした。
音楽は時間の中で展開する芸術だ。イラストレーションは通常、一瞬を切り取る静的なメディアだ。だが矢野の作品には、静止画でありながら時間の流れを感じさせる不思議な力がある。これは音楽家や演劇人との協働を通じて磨かれた感覚かもしれない。
中村佳穂の音楽は実験的でありながら親密だ。矢野の絵もまた、前衛的でありながら観る者を拒絶しない。この共鳴が、協働を成功させた要因だろう。劇団ロロとの仕事でも、演劇が持つ物語性と視覚性を理解した上で、フライヤーという限られたフォーマットの中に豊かな世界を構築した。