話は1880年代のアメリカ・ジョージア州アトランタに遡る。コーラの原液を考案したのは、退役軍人であり薬剤師でもあったジョン・ペンバートン博士だ。彼が目指したのは、頭痛や神経痛、そして胃の不快感を和らげるための「薬用シロップ」だった。当時の薬局は自家製のトニックや滋養強壮剤を売る場であり、調剤と飲料の境目はきわめて曖昧だったのだ。
時を経て、このシロップは炭酸水と出会い、世界中で愛飲される巨大プロダクトへと急成長を遂げた。現代において清涼飲料水業界のトップを走る飲料と、病気を治療する製薬業界の製品は完全に一線を画している。しかし、誕生の原点に「薬剤師の調合」があったという史実が、時を超えて今なお「胃に効く飲料」という神秘的なイメージを補強し続けている。