日下開山を語る上で欠かせない歴史上の人物が、日本相撲協会によって初代横綱と公認されている明石志賀之助(あかし しがのすけ)です。
伝承によれば、明石志賀之助は江戸時代初期の寛永年間に活躍した巨漢力士であり、三代将軍・徳川家光の上覧相撲において見事な勝利を収めました。その圧倒的な怪力と武勇を激賞した家光から「日下開山」の綸旨(称号)を賜ったと伝えられています。これが相撲史における日下開山の象徴的な起源とされています。
ただし、明石志賀之助に関する当時の一次史料は極めて少なく、実在性や具体的な戦績については講談や後世の創作が入り混じっている側面も否定できません。実質的に腰に注連縄(しめなわ)を締めて土俵入りを行う「横綱」という形態を明石自身が行っていたわけではないものの、後世の相撲界は「日下開山を授かった伝説の最強力士=横綱の始祖」として位置づけ、歴代横綱の筆頭にその名を刻みました。日下開山という称号の神格化が、横綱の歴史そのものを基礎づけた決定的な証左といえます。