毎年冬になると大量の流氷が押し寄せるオホーツク海は、彼らにとって生命のゆりかごだ。流氷の底に付着した植物プランクトンを起点とする豊かな食物連鎖の中で、ハダカカメガイは重要な位置を占めている。近年の海洋生物学における現場調査でも、流氷の変動が彼らの発生量に直結していることが分かってきた。
さらに特筆すべきは、彼らの驚異的な耐餓能力だ。一度しっかり獲物を捕食すると、最長で約1年間も何も食べずに生き延びることができる。体内の脂質を少しずつ消費し、心拍数や代謝を極限まで下げる仕組みだ。氷の下の暗闇で静かに春を待つ生命力は、過酷な環境に適応した生物の奇跡といえる。