映画『1リットルの涙』(2004年秋先行上映・2005年2月全国公開/岡村力監督)と、同年秋にフジテレビ系列で放送されたテレビドラマ版の最大の違いは、「劇的エンターテインメントとしての脚色」か「手記に忠実な記録映画的リアリズム」かという制作スタンスの差にあります。
最も象徴的な違いは、ドラマ版で物語の主軸を担ったクラスメイト・麻生遥斗(演:錦戸亮)の存在です。実は、麻生遥斗はドラマのために作られた完全な架空のキャラクターであり、木藤亜矢さんの原作手記には登場しません。ドラマ版では思春期の淡い恋愛や葛藤をドラマチックに描く装置として機能しましたが、映画版にはそうしたロマンス要素は一切盛り込まれていません。
映画版が描くのは、進行性の病魔によって自由を奪われていく少女が直面した「歩けなくなる恐怖」「言葉を奪われる絶望」、そして「生きる場所を求めて養護学校へ転校する葛藤」という生々しい事実そのものです。実際の愛知県立岡崎養護学校(現・愛知県立岡崎特別支援学校)や豊橋市内でロケーションが行われ、原作の持つ静謐かつ重厚なメッセージを忠実に再現しています。