日本における猛獣被害の歴史を語るうえで、大正時代に起きた「三毛別羆事件」を避けて通ることはできない。開拓村を突如襲った1頭の巨大クマが、妊婦や幼子を含む7名の命を奪ったこの悲劇は、野性に潜む人食い行為の凄惨さを後世に刻みつけた。
この未曾有の事態に終止符を打ったのが、伝説のマタギと称される山本兵吉であった。彼はクマの生態と行動パターンを熟知し、極限の緊張感の中で狙撃を成功させた。三毛別羆事件が教えてくれる最大の教訓は、一度人を食害した個体は絶対に人間を恐れなくなり、駆除する以外に被害を止める術がないという冷酷な事実である。