新倉富士浅間神社が鎮座するのは、富士吉田市新倉の新倉山(あらくらやま)中腹に広がる新倉山浅間公園内です。創祀は慶雲3年(西暦705年)と伝えられ、甲斐国八代郡荒倉郷の首長が富士山の大噴火を鎮めるために神霊を祀ったのが始まりとされています。主祭神には美と繁栄の女神である木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)、大山祇命(おおやまづみのみこと)、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の三柱を祀り、古くから災滅除け・家庭円満・安産・子育て・商売繁盛の篤いご利益で崇敬を集めてきました。
この歴史ある古社が世界的な知名度を獲得した最大の要因は、境内上部に位置する五重塔「忠霊塔」の存在です。忠霊塔は1962年(昭和37年)に戦没者慰霊塔として建立された鉄筋コンクリート造の建造物ですが、京都や奈良の寺院仏閣とは異なり、「紅色の仏塔・雄大な雪化粧の富士山・四季折々の自然」がワンフレームに収まる計算され尽くした構図が、外国人観光客の口コミや旅行ガイド『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』の表紙などを通じて世界中に拡散されました。
現場を訪れた多くの参拝者が息をのむのは、人工物である五重塔と自然の最高峰である富士山が見事に調和した、静謐かつ圧倒的なパノラマです。展望デッキから望むその景観は、単なる観光地の枠を超え、「日本人が心に描く原風景」としての神聖さを今なお放っています。