同じ「佐々木のフォーク」という代名詞を持ちながら、大魔神・佐々木主浩と令和の怪物・佐々木朗希のボールには、設計思想において180度異なるアプローチが存在します。
一般的にフォークボールは「ボールを深く挟んで意図的に指から抜くことで、無回転(ナックルに近い状態)にして落とす球種」と理解されがちです。しかし、日本プロ野球名球会副理事長も務める佐々木主浩本人が野球専門誌や解説で明かしているのは、真逆の理論でした。佐々木主浩は「フォークの核は無回転ではなく、むしろ狙った落差を作るためにどの縫い目に指を掛けて回転をコントロールするかにある」と明言しています。親指をボールの真下にしっかりと添え、人差し指と中指の第一関節付近を縫い目に深く引っ掛けることで、適度な順回転やジャイロ回転を与え、自らの指先感覚で真下に「鋭く叩き落とす」軌道を生み出していました。
一方、佐々木朗希の握り方は、大魔神ほどの極端な深挟みではなく、スプリット(スプリットフィンガード・ファストボール)に近い浅めのグリップを採用しています。人差し指と中指の幅をわずかに広げ、親指はボールの側面に添えるスタイルです。この握りによって、回転数は一般的な直球(約2,200〜2,400rpm)から約1,000〜1,200rpm程度へと激減します。無回転に近い状態で推進力を残したまま直進し、ホームプレート手前で揚力を失って自由落下します。
さらにトラッキングデータ解析によると、佐々木朗希のフォークは単に真下へ落ちるだけではありません。実戦で投じられたフォークの約3分の2が、右打者の内角(左打者の外角)へシュート気味に横変化(約15〜25cm)しながら沈むという特性を持っています。縦の落差に加えて横の食い込みが加わることで、バットの芯を外すだけでなく、空振りを奪う確率を跳ね上げているのです。