89歳を迎えてなお外交の舞台に立ち続ける河野洋平の現在を、政治社会学および国際政治学の視点からどのように総括すべきでしょうか。ここで浮き彫りになるのは、日本政治が長年抱えてきた「属人的外交パイプの功罪」です。
中国共産党の対外戦略には、相手国の退役有力者を「老朋友(古くからの友人)」として丁重に遇し、その影響力を通じて相手国の世論や財界に自国有利な親和性を形成させる伝統的な「統一戦線工作」の側面が存在します。特定のカリスマや歴史的恩義に依存した対話チャンネルは、危機的状況下でホットラインとして機能しうる反面、相手側の宣伝工作にレバレッジ(梃子)として使われる構造的脆弱性を常に内包しています。
安全保障の枠組みが激変した時代において、かつてのハト派長老が主導する対中対話から学ぶべき教訓は、「対話チャンネルを感情的に全否定せず、しかし相手の戦略的意図を冷徹に見透かした上で多層的に使い分ける」という戦略的柔軟性です。民間や経済の実利を確保するパイプラインを堅持しつつ、国の防衛と経済安全保障には一歩も引かない是々非々のバランス感覚こそが、これからの日本外交に不可欠な羅針盤となります。