無惨を太陽の光で灰燼に帰せしめた直後、物語は最大の絶望を迎えます。炭治郎は息絶える寸前の無惨から全血と意思を注入され、日の光を克服した最強の「鬼の王」へと変貌を遂げました。この鬼化のプロセスにおいて、読者を驚愕させたのが破壊されていたはずの右目の再生です。無惨の強大な再生能力を引き継いだことで、腫れ上がっていた肉塊は瞬時に吹き飛び、失われていた右眼球は新たな鬼の瞳(縦に裂けた瞳孔)として異様な輝きを放ちながら蘇りました。
しかし、栗花落カナヲが命がけで投与した胡蝶しのぶ特製の「人間に戻す薬」によって、炭治郎は奇跡的に人間の心と肉体を取り戻します。ここで生じる最大の疑問が、「人間に戻った後、再生した右目の視力は維持されたのか、それとも治らなかったのか」という点です。結論から言えば、炭治郎の右目の視力は二度と戻りませんでした。
単行本最終23巻第204話、そして公式ファンブック『鬼殺隊見聞録・弐』における解説によれば、人間に戻った炭治郎の右目は「見えておらず、触っても感覚がほとんどない」状態となっています。鬼化の力で物理的な眼球の形状こそ復元されたものの、人間化の薬が鬼の細胞分裂と再生能力を急激に阻害・死滅させたため、神経系と網膜のシナプス結合までは正常な生体組織として定着しなかったのです。瞳のハイライトは完全に消え去り、白く濁ったような光のない瞳として描かれており、左腕の肘から下が動かない後遺症とともに、過酷な戦いの不可逆的な代償として残ることになりました。