この重層的な世界観を支えたのが、令和のシングルマザー・犬島渚を演じた仲里依紗と、昭和と令和の二役を見事に演じ分けた磯村勇斗だ。渚は現代社会の労働環境や育児のプレッシャーを一身に背負い、市郎という異分子と出会うことで自らの感情を解き放っていく。彼女の涙や戸惑いは、現代を生きる多くの働く人々の代弁でもあった。
一方、磯村勇斗の演じ分けは職人芸の域に達していた。昭和のムッチ先輩こと秋津睦実のコミカルな佇まいと、令和の真面目で繊細な息子・秋津真彦。二つの異なる時代の空気を肉体言語で表現し、物語のタイムラインを違和感なく繋ぎ止めるアンカーの役割を果たした。彼らの緻密な演技があったからこそ、荒唐無稽なタイムスリップ劇に確かなリアリティが宿ったのだ。