これほどのリスクが叫ばれているにもかかわらず、なぜ多くの現場で更新が後回しにされてしまうのでしょうか。SNSや質問サイト、社内情シス担当者への取材から浮かび上がるPDF更新しない理由とリスクのリアルな声を集約すると、そこにはユーザー特有の心理的メカニズムが見えてきます。
「書類を作成している最中に突然ポップアップが出てきて、再起動を要求されるのがストレス」「過去にソフトウェアをアップデートしたら動作が重くなったり、プラグインが動かなくなったりした経験がありトラウマになっている」「無料ビューアの更新ごときでウイルスに感染するなんて大げさだと思っている」といった声が数多く聞かれます。
人間には、差し迫った危険を直感できないときに「自分だけはトラブルに遭わないだろう」と過小評価する「正常性バイアス」が働きます。さらに、作業を妨げられたくないという「心理的リアクタンス(行動の自由を制限されることへの反発)」が重なり、更新通知の「後で通知する」ボタンを無意識にクリックしてしまうのです。
また、過去のアップデート不具合から生じる「現状維持バイアス」も根深く存在します。「動いているシステムには触るな」という古いIT運用の教条主義が個人のデスクトップにまで波及し、結果として最も危険な状態を自ら作り出している実態が浮き彫りになっています。