ことわざ辞典や国語辞典において、「割れ鍋に綴じ蓋」は「破損した鍋にもそれ相応の修理した蓋があるように、どんな人にもそれにふさわしい配偶者がいること」、また「両者が互いの欠点を補い合って一対の調和を保つこと」のたとえとして定義されています。
この表現の背景には、江戸時代から昭和初期にかけて日本の生活を支えた「鋳掛屋(いかけや)」などの修繕職人の技術が存在します。「綴じ蓋(とじぶた)」とは、ひびが入ったり欠けたりした鍋(割れ鍋)に合わせて、真鍮(しんちゅう)の針金や鎹(かすがい)で繕い、ぴったり合うように細工・調整された蓋を指します。
新品の端正な鍋には既製品の美しい蓋が合いますが、歪みや傷のある鍋には、同じように手を加えて形を合わせた特製の蓋でなければ隙間が空いてしまいます。「完全無欠ではない者同士だからこそ、互いの凹凸が奇跡的に噛み合う」という、生活の知恵から生まれたリアルな人間観察がこの言葉の語源です。
なお、表記や読み方として「破れ鍋に綴じ蓋(やれなべにとじぶた)」と呼ばれることも多々あります。両者の間に意味の違いはなく、同義語として扱われます。古文献や地域の方言差によって「破れ(やれ)」と「割れ(われ)」の双方が定着しており、文化庁の国語世論調査等でも双方の言い回しが広く認知されています。