肋間神経痛を発症した人の多くが、ドラッグストアで市販の消炎鎮痛湿布を購入して胸や背中に貼ります。しかし、「数日貼っても全く効かない」と首をかしげる例が後を絶ちません。これには明確な薬理学的理由があります。
湿布や一般的な鎮痛薬(ロキソプロフェンなど)は、筋肉の炎症や打撲によって生じる「炎症性疼痛」を抑えるための薬剤です。プロスタグランジンという炎症物質の生成を抑えることで痛みを鎮めます。しかし、肋間神経痛の本質は神経そのものが締め付けられたり傷ついたりして誤作動を起こす「神経障害性疼痛」です。神経の過剰な興奮による電気信号の暴走に対しては、湿布の抗炎症成分がほとんど作用しないため、「貼っても痛みが引かない」という事態が起こります。
もうひとつの見落とされがちな要因が精神的ストレスと自律神経の乱れです。慢性的な過重労働や人間関係の摩擦にさらされると、交感神経が極度に優位となり、毛細血管が収縮して血流不全を招きます。すると肋骨周囲の深層筋肉群が持続的な過緊張を起こし、肋間神経を物理的に圧迫し続ける悪循環が生じるのです。
心身医学の観点からも、長引く肋間神経痛の背景には「無意識のストレスによる筋硬直」や「脳の痛みを感じるセンサーの過敏化(中枢感作)」が関与していると指摘されています。レントゲンやCTを撮っても「骨や内臓に全く異常がない」と言われた場合、その痛みは過度の精神的緊張や睡眠不足に対する身体からの危険信号である可能性を疑うべきです。