中核症状に直面した家族が真っ先に突きあたるのは、「正論をぶつけてしまう」という壁だ。日時の間違いや記憶の食い違いを論理的に訂正しようとすると、本人は自尊心を傷つけられ、混乱と怒りを深めてしまう。ケアの極意は、患者が見ている「世界の景色」にそっと寄り添うことにある。
記憶が曖昧になっても、その場で感じた不快感や安心感といった感情の記憶は長く残る。否定せず、頷き、不安を受け止める姿勢こそが、周辺症状(BPSD)の発症を防ぐ最大の防波堤となる。完璧な介護を目指すのではなく、外部のサポートを賢く頼る姿勢こそが、長期にわたるケアを支える軸となる。