エンターテインメントの文脈に目を向けると、経歴を偽る天才たちの物語はどこか魅力的なピカレスク・ロマンとして消費される傾向がある。映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』で描かれた実在の天才詐欺師の滑稽なまでの身軽さや、法学の学位を持たない青年が卓越した記憶力で法廷を鮮やかに魅了する人気ドラマ『SUITS/スーツ』は、世界中で空前のヒットを記録した。さらに、Netflixなどで配信される実録ドキュメンタリー番組でも、嘘の肩書を駆使して上流階級に忍び込んだ人物のドラマチックな軌跡が視聴者の好奇心を惹きつけてやまない。
だが、スクリーン上の痛快な演出と、私たちが生きる現実の厳格なシステムとの間には底知れないギャップが存在する。劇中の主人公たちのような機転やハッタリは、高度にデータベース化された現代の照会網の前では一切通用しない。現実の世界で待っているのは、身勝手なロマンではなく過酷なペナルティだ。