アニメ版で見事なコメディリリーフとして描かれたこの一幕ですが、その土台となったのは原作PCゲーム版『CLANNAD』における緻密なテキスト設計と選択肢です。ゲーム版における春原陽平は、ただのギャグ要員にとどまらず、プレイヤーが退屈しがちな日常パートを牽引する極めて重要な相棒として設計されていました。
原作の共通ルートにおいて、主人公・岡崎朋也が春原の思考ルーチンを狂わせる一連の選択肢が存在します。朋也は日常の何気ない会話の中で、春原が発言するたびに「それと便座カバー」を付け加えるよう誘導を重ね、一種のパブロフの犬のような心理的条件付けを完了させます。プレイヤー自身の選択によって春原が追い詰められ、見事にトラップに引っかかるカタルシスこそが、このシーンが伝説化した真の理由です。
さらに、アニメ化に際してこのシーンに魂を吹き込んだのが、春原陽平役を演じた声優・阪口大助氏の圧倒的な演技力でした。当時のアフレコ現場の熱量を伝えるキャストインタビューや回顧録でも語られている通り、阪口氏の持ち味である「喉が千切れんばかりのハイトーンなキレ芸」と「理不尽に巻き込まれた人間の哀愁」が完璧に融合。単なるテキスト上のギャグを、時代を超える爆笑の名シーンへと昇華させました。