著名人の死が次の死を誘発する――。「ウェルテル効果」と呼ばれるこの心理現象は、メディア研究や臨床の現場で長年警戒されてきた。華やかな芸能界で活躍していた人物が突然自ら命を絶つと、同時代を生きてきた視聴者は強い心理的同調を起こしやすい。特に、自らも深い苦悩や孤立感を抱えている人々にとって、その訃報は「苦痛からの唯一の逃げ道」として誤認される危険を孕んでいる。
かつてのニュース報道は、遺書の存在や具体的な手段、現場の状況を詳細に伝える傾向があった。ショッキングな映像やドラマチックな演出は視聴率を集める一方で、心理的に脆くなっている人々を極限まで追い詰める刃ともなった。過熱する取材合戦がもたらす負の連鎖を、社会はどう断ち切るべきか。