江口氏のキャリアを振り返る上で外せないのが、集英社の『週刊少年ジャンプ』で連載され一世を風靡した伝説的ギャグ漫画『ストップ!! ひばりくん!』だ。洗練されたファッションセンスとギャグの強烈なギャップで当時の若い読者を熱狂させたが、この頃から既に彼の作品にはポップアートへの強い傾倒が見受けられた。
アメリカのポップアートを代表するロイ・リキテンスタインが、既存の漫画の1コマを拡大・再構成して現代美術の領域に持ち込んだように、江口氏もまた、既存のグラフィックや広告デザインを「素材」として再構築するサンプリング的手法を自身のイラストに採り入れていた節がある。漫画・イラスト業界において、こうしたポップアート表現と商業イラストの境界線は長年曖昧であり、それが時代の変化に伴って「模倣」として再定義されることになった側面は否定できない。