シリーズの礎を築いた初代・加藤和樹の存在感は、今なお伝説として語り継がれている。2005年の初登場時、まだ手探りだった黎明期のミュージカル『テニスの王子様』において、彼が提示した跡部景吾はまさに「本物が現れた」という戦慄を観客に与えた。低音の効いた重厚な声、挑発的な眼差し、相手を圧倒するロックスターのようなオーラ。加藤が確立した絶対強者の佇まいは、その後のシリーズ全体の方向性を決定づけた。現在では『レ・ミゼラブル』をはじめとする帝劇のグランドミュージカルやストレートプレイで主役級を張り、日本のミュージカル界を牽引するトップランナーへと飛翔している。
2ndシーズンでバトンを受け継いだ青木玄徳は、長身を活かしたスタイリッシュな身のこなしと、クールな知性を前面に押し出した跡部像を構築した。感情を過度に爆発させるのではなく、内に秘めたプライドと冷徹なまでの洞察力を際立たせる芝居で、氷帝学園というエリート集団を率いるトップの説得力を生み出した。舞台のみならず映像作品でも独自のバイプレイヤーとして確固たる地位を築いている。
そして3rdシーズンの三浦宏規は、歴代の解釈に劇的なパラダイムシフトをもたらした。幼少期から培った本格的なクラシックバレエの技術を惜しみなく注ぎ込み、ターンひとつ、ステップひとつに至るまで貴族的な優雅さを体現。「コート上の舞踏会」と評されたその所作の美しさは、跡部景吾というキャラクターに新たな芸術的次元を付与した。三浦はその後、『千と千尋の神隠し』ハク役や数々の名作舞台で主演を務め、世界公演を成功させるなど、若手屈指の実力派スターとして国内外で快進撃を続けている。
4thシーズンおよび新テニミュの舞台で新たな帝王像を打ち立てた高橋怜也の武器は、圧巻の歌唱力とパッションだ。繊細かつ伸びやかなハイトーンボイスで劇中歌の難曲を歌いこなし、現代的なスタイリッシュさと泥臭いまでの闘争心を両立。王者のプライドが砕かれ、そこからさらに這い上がる跡部の人間臭いドラマを熱演し、観客の心を鷲掴みにした。