東京都目黒区の目黒川近く、洗練されたカフェやモダンな低層マンションが立ち並ぶエリアを進むと、突如として視界を遮る巨大な城郭が現れる。1970年代初頭の日本は、まさに高度経済成長の頂点。都市に溢れるエネルギーと人々の豊かさへの憧憬が、この破格の意匠を生み出した。近隣に位置する目黒雅叙園(現在のホテル雅叙園東京)が誇る和の伝統美や絢爛たる装飾文化とは対極をなす、西洋の城郭への強烈な憧れがここに結実している。
館内に足を踏み入れれば、エントランスを飾る煌めくシャンデリアとアール・デコ調の繊細な装飾モチーフが訪れる者を迎える。当時の職人技が惜しみなく投入された造作の数々は、長年にわたる定期的なメンテナンスによってその輝きを保ち続けている。まさに昭和レトロ建築の到達点であり、東京の都市空間に奇跡的に遺された立体的なアート作品と言えるだろう。