青果売り場や産地直売所で「生」という文字を目にした消費者のなかには、「新鮮な朝採れなら、刺身のように生のままでも食べられるのではないか」と誤認するケースが散見されます。しかし、生落花生が生食NGの理由は単なる食感の良し悪しではなく、明確な毒性・消化器障害のリスクが存在するためです。
生の落花生をはじめとする未加熱のマメ科種子には、植物が外敵から身を守るための生体防御物質として「レクチン(植物性タンパク質)」や「トリプシン・インヒビター(消化酵素阻害物質)」が高濃度に含まれています。これらを加熱せずに摂取すると、胃腸内の消化酵素の働きが強力に阻害され、小腸粘膜のバリア機能が低下します。結果として、激しい胃痛、嘔吐、急性の下痢といった重篤な消化器症状を引き起こす危険性が食品衛生の観点から指摘されています。
さらに、生落花生に含まれるデンプンは「ベータデンプン」と呼ばれる結晶構造を保っており、人間の消化酵素(アミラーゼ)ではほとんど分解できません。加熱によって結晶を崩し「アルファデンプン(糊化状態)」へと変化させなければ、エネルギーとして吸収できないばかりか腸内細菌の異常発酵を招き、腹部膨満感や消化不良の原因となります。したがって、「加熱が不十分な落花生」を口にすることは厳に慎まなければなりません。