彼女が長年守り続けてきた髪を30センチ以上もバッサリとカットした背景には、ひとつの映像作品に対する強い執念があった。島本理生による直木賞受賞作を原案とし、心理サスペンスの巨匠・堤幸彦監督がメガホンをとったサスペンス映画『ファーストラヴ』。複雑なトラウマを抱えた主人公の公認心理師・聖山由紀という難役に挑むにあたり、彼女自ら髪を切る提案を行ったというエピソードはあまりにも有名だ。
物語の深層へと潜り込んでいく重厚なミステリー映画の世界観において、無駄を削ぎ落とした短髪は役に圧倒的なリアルさと切迫感をもたらした。芸能界の第一線でキャリアを重ねてもなお、役作りのために自身のアイコンさえ捨てる覚悟。その潔い姿勢がスクリーンの端々にまで満ち引き、観る者の心を揺さぶったのだ。