現代では恐ろしい響きを持つ「呪詛(じゅそ)」や「呪文(じゅもん)」という言葉も、漢字の歴史をたどると神聖な言霊の力に基づいています。
「呪詛」の「詛」の字も、言偏に「且(祖先の神霊を祀る祭壇)」を組み合わせた文字です。本来の呪詛とは、私利私欲の恨みで人を呪うことではなく、「神前で盟約を交わし、もし誓いを破ったならば神の裁きを受けよと誓約すること」を意味していました。国家間や部族間の同盟を結ぶ際、裏切りを防止するための公的な儀式だったのです。
また「呪文」は、神仏や大いなる自然の法則を動かすための「特定の波動・リズムを持った神聖な祈りのフレーズ」でした。サンスクリット語のマントラ(真言)や陀羅尼(だらに)が漢訳される際にも「呪」の字が当てられたことからも、単なる怨嗟の声ではなく、霊的境地に至るための言語テクノロジーであった事実が証明されています。