天皇陛下をはじめとする皇族方の正月の食卓を支えているのが、宮内庁管理部「大膳課(だいぜんか)」です。律令時代の大膳職に起源を持つこの専門部局では、和食、洋食、製菓・主厨など各分野の最高峰の料理人が日々の食事から国賓の晩餐会までを取り仕切っています。
元旦の宮中では、一般家庭のように朝から重箱を広げる光景は見られません。早朝から行われる「四方拝(しほうはい)」や「歳旦祭(さいたんさい)」といった厳粛な祭祀の後、皇室ならではの神聖な正月料理が供されます。
その代表格が「御祝肴(おいわいざかな)」と「お雑煮」、そして伝統菓子である「菱花びら餅(お葩餅・おはなびら)」です。大膳課の正月膳における代表的な献立の特色は次の通りです。
・御祝肴:勝栗(かちぐり)、数の子、田作り、黒豆など、古くから縁起を担ぐ神饌(しんせん)に近い簡潔かつ極上の品々。
・お雑煮:京都御所時代の伝統を色濃く残す、白味噌仕立てに丸餅。具材には子孫繁栄を願う里芋(頭芋)や大根などが用いられ、角のない円満な仕上がりを重んじる。
・お屠蘇(御薬):生薬を漬け込んだ伝統の屠蘇酒を用い、無病息災と延命長寿を祈念して特別な器で順にいただく。
大膳職から受け継がれる伝統メニューは、単なる贅沢品ではなく、日本古来の祈りと格式が凝縮された至高の食体系といえます。