インターネット上の言説において散見される最大の誤解は、「パニック障害を完全に克服した=もう発作の種は完全に消え去った」という認識です。精神医学において、パニック障害のゴールは「完治(病気が全くなかった状態に戻る)」というよりも、症状がコントロールされ日常生活を支障なく送れる「寛解(かんかい)」の状態を目指すことにあります。
松島聡自身も、復帰後のインタビューやメディア出演において「完全に不安がゼロになったわけではない」「自分の弱さや体調の波を受け入れながら生きている」と率直に告白しています。このオープンなスタンスこそが、彼が再発を防ぎながら安定したパフォーマンスを維持できている決定的な要因です。
「病気を克服して元通りにならなければならない」という強迫観念を捨て、「不安を感じやすい自分も自分の一部」として受容する心理的柔軟性(Psychological Flexibility)を獲得したこと。これこそが、ネット上の短絡的な「完治論」とは異なる、臨床心理学的に極めて健全なリアリティです。