体が極度に疲労しているにもかかわらず眠りに落ちない現象は、睡眠科学の分野で「過覚醒(Hyperarousal)」と呼ばれている。脳が日中のストレスやスマートフォンからの視覚的刺激によって過度な緊張状態に置かれると、交感神経が優位なまま固定され、自律神経系のバランスが激しく乱れてしまうのだ。
本来であれば、夜が深まるにつれて体内でメラトニンという睡眠ホルモンが分泌され、深部体温が下がって自然な入眠へと誘われる。しかし、脳が危険を察知しているかのような警戒態勢にあると、メラトニンの正常な働きが阻害され、血中のストレスホルモン(コルチゾール)が高止まりする。UCバークレー校の著名な睡眠科学者マシュー・ウォーカー教授は、著書や研究の中で「疲労していることと、身体が睡眠の準備ができていることは全く別物だ」と指摘する。身体が限界を迎えていても、脳のスイッチが「オフ」にならない限り、入眠の扉は開かないのだ。