ぺこぱの芸歴における最大の転換点は、間違いなく『M-1グランプリ2019』での決勝進出と第3位という快挙です。最終決戦に残る原動力となったのが、現在も代名詞となっている「否定しないツッコミ」でした。
この画期的な漫才スタイルは、偶然の産物ではありません。初期のぺこぱは、着物姿にローラーシューズを履いた松陰寺が激しく突っ込む「キザ芸人」スタイルや、強めの否定ツッコミを試行錯誤していました。しかし、ライブの客席が引いてしまう場面に直面した松陰寺が、ある日の舞台上で咄嗟に相方のボケを肯定し、受け入れるフレーズを放ったところ、会場が温かい笑いに包まれたといいます。
「間違いを正すのではなく、相手の背景を受け入れた上で笑いに変える」――この発想から生まれた「時を戻そう」「悪くないだろう」「どうしたんだ急に、フォント変えてきたのか」といったフレーズは、視聴者に強い爽快感と安心感を与えました。当時の密着取材や番組インタビューにおいて松陰寺は、「誰かを傷つけて笑いを取ることに限界を感じていた時期に、全肯定という逃げ場のない優しさが自分たちの武器になると確信した」と述懐しています。