脚本家・野木亜紀子の手腕が冴え渡る理由は、悲劇的なエピソードの中にも、社会に対する鋭い洞察と、登場人物たちの息づかいをリアルに感じさせる会話劇を絶妙なバランスで同居させている点にある。
過酷な身元不明遺体の解剖作業の合間に交わされる軽妙なやり取り、中堂系(井浦新)の無愛想ながらも確かな腕と洞察力、そして所長である神倉(松重豊)の組織を守るための苦心。凄惨な事件を扱いながらも、作品全体が暗鬱な悲劇に傾きすぎないのは、生きている人間たちの生活感とユーモアが丁寧に描かれているからだ。
法医学は「死んだ人のための学問」ではなく、「今を生きる人間のための学問」である。野木脚本が一貫して訴え続けるこのテーマが、ここでは「死者の尊厳を取り戻すことで、遺された生者の未来を救う」という形で鮮やかに結実している。