裏磐梯という高原リゾートの地に世界屈指のダリ・コレクションが存在する背景には、スポーツ用品大手「ゼビオ」の創業者である諸橋廷蔵(もろはし ていぞう)氏の類まれな審美眼と強い信念がありました。諸橋氏は1970年代から美術品の蒐集を開始し、オークションでダリの彫刻作品に出会ったことを機に、その革新的な表現力と生命力あふれる造形美へ深く傾倒していきました。
当時の取材記録や関係者の証言によると、諸橋氏は「本物の芸術が持つ生きるエネルギーを、広く一般の人々、とりわけ未来を担う若者たちに肌で感じてほしい」という熱烈な思いを抱いていたと伝えられています。バブル崩壊前後の激動の国際オークション市場において、散逸の危機にあったダリの重要作品群を情熱的に落札。版画や絵画のみならず、大型ブロンズ彫刻を体系的に集め、最終的に約340点を超えるアジア随一のサルバドール・ダリ コレクションを築き上げました。
1999年に開館した同館が裏磐梯の地に建てられた理由は、創業者自身の故郷である福島への恩返しと、「磐梯朝日国立公園の大自然と前衛芸術の融合」を目指したためです。神秘的な木々と池に囲まれた環境は、ダリが愛したスペイン・カダケスの風景とも精神的な親和性を持っており、訪れる鑑賞者を非日常のシュルレアリスム世界へと誘っています。