ネット上のレビューサイトやSNSにおいて、歴代全5作の中で圧倒的な支持率を誇り続けるのが第2作『超劇場版ケロロ軍曹2 深海のプリンセスであります!』です。なぜ本作は、ファミリー向けアニメ映画の枠組みを超えて「大人の鑑賞に耐えうる名作」として語り継がれているのでしょうか。その真相には、綿密に構築された心理描写と演出の妙が存在します。
本作の監督を務めた山口晋氏、チーフ演出の佐藤順一総監督をはじめとする制作陣は、夏美という少女の内面を深く掘り下げました。日向夏美は普段、家事を切り盛りし、だらしないケロロを厳しく叱りつけるしっかり者として描かれます。しかし物語中盤、深海の孤独な王子メールに捕らわれた夏美は、深海王国の記憶投影空間で「母親に甘えたい盛りの幼少期」の記憶と向き合うことになります。
キャリアウーマンとして多忙を極める母・秋を支えるため、無意識のうちに「しっかり者の姉」を演じ、自らの甘えを封じ込めてきた夏美の葛藤。そこに、故郷の星を失い永遠の孤独を抱えるメールの哀愁が重なります。家族のために自立を急ぎすぎた少女が、本当の弱音を吐き、それを弟の冬樹やケロロ小隊が命懸けで受け止めに行く展開は、臨床心理学における「心理的居場所の再獲得」そのものです。単なるギャグアニメの延長ではない、痛烈な人間賛歌が込められているからこそ、本作は今も色褪せない感動を呼ぶのです。