飛び込み事故が発生した際、鉄道会社が被る損害は多岐にわたります。しかし、民法上の不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求において、認められるのは「事故と相当因果関係のある直接的な実損害」に限られます。主な内訳は以下の通りです。
1. 振替輸送費用の負担
運転見合わせ時に、他社線(地下鉄や私鉄、バスなど)へ乗客を誘導するために発生する振替輸送の実費です。都市部の過密ダイヤ路線では、この振替輸送費用が損害額の中で大きな割合を占めます。
2. 車両・軌道設備の修理・清掃費用
先頭車両のガラス破損、スカート(排障器)やブレーキ配管の損傷修理、ホームドアの破損補修、現場の清掃や消毒にかかる費用です。
3. 運賃の払い戻し・人件費
運転打ち切りに伴う乗車券の払い戻し手数料や、現場対応およびダイヤ復旧のために臨時招集された駅員・乗務員の手当などが含まれます。
一方で、遅延によって乗客が「商談に遅れた」「飛行機に乗り遅れた」といった個々の損害については、鉄道会社が賠償責任を負わない契約(旅客営業規則)になっているため、飛び込んだ本人側へ請求が回ってくることもありません。