鳥居の最大の役割は「結界」の明示にある。外側の俗世(穢れや迷いに満ちた人間の世界)と、内側の神域(清浄が保たれた神の鎮座地)を物理的かつ観念的に分断する。扉が存在しないにもかかわらず、そこには不可侵の境界線が引かれているのだ。
視覚的な象徴である「朱色」には、古代の切実な祈りと科学的合理性が同居している。朱の原料である辰砂(硫化水銀)は、古来より魔除けの力を持つと信じられてきただけでなく、木材の腐食や防虫に絶大な効果を発揮する高級塗料でもあった。災厄を退け、神聖さを長く保ち続けるための現実的な知恵。生命力を象徴する赤は、神域の入り口で参拝者の精神を覚醒させる装置としても作用している。