この葛藤の本質は、個人の人格の否定ではなく、「伝統の継承」と「近代的な自己実現」という二つの異なる価値観の衝突にある。
美智子さまは、古くからの皇室の伝統を敬い、自らをその枠組みに適応させることで皇室を守ろうとされた。いわば「滅私奉公」の美学である。対して雅子さまは、自己のアイデンティティやキャリアを完全には捨て去ることができず、現代的な女性としての生き方と皇室のあり方を模索された。
どちらが正しいというわけではない。しかし、宮内庁という保守的な組織は、雅子さまの「変革」を受け入れる準備ができていなかった。結果として、雅子さまは長期の療養に入り、美智子さまはそれを見守るしかないという、張り詰めた沈黙の時代が続くことになる。