桜丘や神泉、奥渋谷と呼ばれるエリアには、看板を控えめに出した隠れ家的な小料理屋が点在する。重厚な木製扉を押し開けると、そこに広がるのは白木の一枚板カウンター。目の前にずらりと並ぶのは、旬の茄子をじっくり揚げ煮にした一品や、出汁をしみ込ませた高野豆腐、九条ねぎとホタテのぬた和えといった、目にも鮮やかな鉢料理たちだ。
派手な演出はない。けれど、出汁の一滴、塩加減ひとつに職人の技が光る。若者の喧騒を離れ、しっとりと酒を傾けたい30代~50代の男女が、こうした空間を自分だけの隠れ家として確保し始めている。一見客を温かく包み込むアットホームな空気感も、このエリアのおばんざい屋が持つ特有の魅力だ。