「酉」が酒を意味する歴史的背景は、現代の年中行事や暦の慣習にも色濃く残されています。日本酒業界や伝統行事において、「酉」と「酒」は切っても切れない強い絆で結ばれています。
1. なぜ10月1日は「日本酒の日」なのか?
日本酒造組合中央会が1978年に制定した「10月1日=日本酒の日」。この記念日の由来には2つの大きな理由があります。
- 干支の順番:十二支を子から順に数えると、10番目が「酉(とり)」に該当します。「酉」が酒を表す文字であることから、10月が選ばれました。
- 酒造りのサイクル:日本の伝統的な酒造りは、秋に収穫された新米を使って10月から本格的な寒造りに入ります。古くから10月1日は蔵元にとっての「酒造元旦(酒造年度の始まり)」として祝われてきた歴史があります。
2. 時間の概念「酉の刻(とりのこく)」と晩酌
昔の時刻の数え方である「酉の刻」は、現在の夕方17時頃から19時頃(午後6時前後)を指します。一日の農作業や仕事を終え、ちょうど夕食とともに「晩酌」を始める時間帯と見事に一致しています。酒壺を意味する「酉」の時刻に酒を酌み交わすという生活リズムは、古代の生活習慣と自然に調和していたといえます。
3. 「酉の市」と祝い酒に込められた縁起
毎年11月の酉の日に全国の鷲神社や大鳥神社で開催される「酉の市(とりのいち)」。開運招福や商売繁盛を願って縁起熊手を求める人々で賑わいますが、ここでも酒は欠かせない神饌(しんせん)であり祝い酒です。「酉」には作物が成熟しきって酒になるという「収穫・充実」の意味が込められており、「福や客を取り(酉)込む」「実りある富を醸す」という強力な吉祥の意味合いを持っています。