昭和64年は、張り詰めた空気のなかで幕を開けた。昭和天皇の容体悪化が連日報じられ、日本全土に「自粛」の空気が蔓延していた時期だ。正月気分は吹き飛び、報道機関は24時間体制でその瞬間に備えていた。
1月7日午前6時33分、昭和天皇が崩御。メディアは一斉に特別報道体制へと突入した。CMは一切カットされ、クラシック音楽や皇室の歴史を振り返る特番が延々と流れる。街からは音楽が消え、繁華街のネオンサインも灯を落とした。日本全体が息を殺し、ひとつの時代の終焉を呆然と見送っていたのだ。
翌1月8日には新たな元号「平成」がスタートする。つまり「64年」と刻印された公文書や硬貨、切符は極めて限られた数しか存在しない。この記録的な短さが、人々の記憶に「幻の年」という強烈な残像を焼き付けることになった。