美風藍で確立した唯一無二のポジションに安住することなく、蒼井はさらに過激な領域へと足を踏み入れていく。その筆頭が『KING OF PRISM』シリーズの如月ルヰ、そして『戦姫絶唱シンフォギアAXZ』のカリオストロだろう。
ルヰが見せる月光のような儚さと、どこか神話めいた神聖さ。観客を無防備にさせるあの柔らかな囁きは、男性声優の従来のキャスティング枠を完全に破壊した。一方でカリオストロでは、元男性でありながら究極の身体美を追求した錬金術師を演じ、艶やかな大人の女性の声と、ふとした瞬間に覗く荒々しい男気を見事に両立させた。女性声優が少年を演じる文化は古くから定着していたが、成人男性が女性キャラクターの身体性と凄味をここまで説得力豊かに演じきった例は極めて稀だ。
性別というコードを軽やかに無効化し、そのキャラクターが持つ美学そのものを発声する。蒼井の芝居は、声優界におけるジェンダー表現の可能性を何年も先へと推し進めた。