ギリシャ神話に登場する「テミス」といえば、右手に正義の剣、左手に偏りのない天秤を掲げ、不偏不党の精神を体現する女神だ。しかし、この作品が描くのは、完璧であるはずの天秤が現代社会の欲と政治によって歪められていく恐怖である。そして奇しくも、その作品自体の争奪戦を巡っても、現実のエンターテインメント産業における壮絶な覇権争いが繰り広げられていた。
関係者の証言によれば、本作の配信権を獲得するため、NetflixとHBO Maxが水面下で激しい提示額の吊り上げ競争を展開。最終的に決定打となったのは、単なる金額の多寡ではなく、クリエイター側へ与えられた表現の絶対的自由だったという。既存の動画配信サービスが守りに入りがちな倫理的タブーに対し、あえて踏み込む覚悟を示したプラットフォームの選択。その激闘の歴史こそが、劇中の冷徹な世界観にそのまま反映されていると言っても過言ではない。