初音ミクという存在が、これほどまでに多くの人々の心を深く惹きつけてやまない背景には、彼女が生まれた独特の文化的基盤がある。2007年、ヤマハが開発した音声合成技術VOCALOIDをベースに、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社が発売した音楽ソフトウェアから彼女の歩みは始まった。
彼女は固定されたストーリーや性格を持つ一般的なアニメヒロインではない。クリエイターたちが制作した楽曲や動画がニコニコ動画やYouTubeといったプラットフォーム上に無数に投稿され、共有されることで、世界中のファンが共創する巨大な文化圏が形成された。クリプトン・フューチャー・メディア株式会社が提示した自由な二次創作のガイドラインは、ユーザーごとの「私だけの初音ミク」を育む土壌となった。近藤氏が愛するミクもまた、こうした広大なエコシステムの中で彼自身の救いとなって現れた固有の存在なのだ。